実施委員長からのお願い

大会のオンライン開催へのご理解とご協力のお願い

 

第54回研究大会実施委員長
第28期日本文化人類学会会長
清水展

 
2020年5月29~31日に開催予定の第54回研究大会につきまして、すでにお伝えしました通り、新型コロナウィルスの感染拡大につながることを避けるため、早稲田大学を会場としての実施を中止し、それに代わってオンラインで実施することにいたしました。

新型コロナウイルスによる肺炎の流行は、3月11日の段階で、世界保健機関(WHO)によってパンデミックに相当するという見解が示されています。この世界規模で進行中の災害ともいえる事態に対しては、専門家や行政に任せておけばよい、あるいはそれで十分とは決して言えず、一人一人が対応を考え、実践する必要があります。こうした状況の下で日本文化人類学会第54回研究大会実施委員会(以下、実施委員会)は、会員や参加者の皆様の健康と安全を第一に考えると同時に、日本文化人類学会が感染拡大を助長してしまうようなことは避けるべきだと考え、このような判断を致しました。

しかし同時に、年に一度の研究大会は、会員同士の研究報告、情報交換、懇親交流の場として、本学会が目的とする文化人類学の発展において、きわめて重要な役割を持っています。そのため実施委員会では早稲田大学での実施に代わる、そして参加者の健康と安全を脅かさない方式として、オンライン・サービスであるZoomを利用した実施、という判断をしました。もちろん、急にオンラインで実施すると言われても戸惑う方も少なくないのではないかと思います。しかし、会員・参加者にとっていま可能な方法のなかでよりよいもの、ということでどうかご理解いただきたく思います。

私ごとで恐縮ですが、Zoomを使ったネット会議は、これまで苦手意識もあって避けてきており、この大会準備の過程で今回初めて参加(利用)しました。ですが、いざ必要に迫られて使ってみると案外と使いやすく、便利さを実感しました。私のような不安感を持つ会員・参加者のため、実施委員会では練習の機会も準備しています。これが今後の新しい可能性を開くチャレンジであるとして、ぜひ前向きにご参加いただけますよう心よりお願い申し上げます。

ただ、綿密に準備をしていても、やはり初めての試みですので、様々なトラブルや不都合が生じうると思います。これにつきましても、ぜひ会員・参加者のみなさまのご協力をお願いします。ご存知の通り、研究大会の開催方式につきましては、2018年に弘前大学での第52回研究大会から、開催校が主催する方式ではなく、学会理事会が主催し、理事会の下部組織である実施委員会が中心となって準備する形に変わりました。これは開催校だけが大きな負担を抱えるのではなく、大会を会員・参加者みなで作り上げていくという変更です。この方式は、第53回大会(東北大学)に続き、今大会でも引き継がれています。繰り返しになりますが、今大会の実施においても、皆様の積極的なご協力をお願いする次第です。

またこちらもご存知のことと思いますが、日本文化人類学会は2019年度より正式に一般社団法人としての歩みをはじめました。それに伴い、会則にかわって定款が定められ、評議員が社員となり、総会が社員総会となるなど、学会の運営についても、名称だけではない様々な変更をしながら、手探りで運営を進めています。近年は若い会員の新規入会数も減っており、学会の財政面での健全な運営も今後の課題となるでしょう。
 
そうしたなかで、今回の大会も、通常の大会と同じ参加費を設定することになりました。皆様からの様々なご意見や反応も想像できますし、実施委員会のなかでもやはり議論が割れた点でした。もちろん金額が低いほうが、若い会員をはじめ多く方にとって参加しやすくなることは認識しています。実施委員会でも、できるだけ多くの方に参加いただけることを考えながらも、今回があくまでも、当初からオンラインを想定して準備してきたものではなく、早稲田大学での実施を念頭に置いて準備してきた大会の、形を変えた実施であること、準備に当たってすでに多額の支出が発生していることを考えて、このような結論に至りました。これによって参加を断念する方がいらっしゃる場合、大変申し訳なく思います。この点については今後の大会に向けての継続的な検討課題とします。

学問も組織も、時代とともに変わっていくことが必要です。研究大会の開催とともに学会の活動を安定して継続し、さらに発展していくための具体的な策として、オンライン・サービスの活用を含めて、どのような方式がベストなのか、実施委員会や理事会でも引き続き、知恵を絞り、議論を重ねます。会員・参加者の皆さまからもぜひ建設的なご提案やご助言をいただけましたら幸いです。